FILM DE BLUE

映画の記録を綴ります。古今東西映画博客

Fatih Akın:ファティース・アキームの本質はストリートにあり。

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記念すべき第1回目はFatih Akın監督を取り上げたいと思います。

 

Fatih Akın監督はドイツ生まれのトルコ人。去年見た『消えた声が、その名を呼ぶ』を見て、ソウルキッチン以降どうしちゃったの?!と少々びっくりしたのですが、彼の初期の作品が大好きなんですね。アルフォンソ・キュアロンの初期の熱ーい感じに似ています。

 

『太陽に恋して』

主人公ダニエルが運命の女性をトルコのイスタンブールに探しにゆくロードムービー。ドイツ、ブルガリアルーマニアと旅をする。ダニエルの運命を予見し、旅の途中で偶然巡り合った女性ジュリーが加わり様々な事件が巻き起こります。すごくピュアな映画で、監督と俳優のフレッシュさが味わえる映画です。

 

『愛より強く』

個人的に1番好きな作品です。主人公のジャイド(ビロル・ユネール)が『太陽に恋して』に引き続き出演しています。とにかくジャイドが魅力的です。くそったれな世界がロマンにあふれているのです。これぞ映画!ジャイドありきの映画です。

時に監督と俳優の運命的な絶対的相性の良さが映画を決めるときがあります。監督とビロルさんの相性は抜群です。このままこのペアで撮り続けていたらヘルツォークとキンスキー並みの歴史に名を残すパワーを発揮できたかもしれません(?)

 

クロッシング・ザ・ブリッジ 〜サウンド・オブ・イスタンブール〜』はトルコ音楽のドキュメンタリー映画です。トルコという国の歴史の奥深さを感じます。ヨーロッパ、地中海、中東・・ものすごく色々なルーツから音楽シーンが形成されているのですね。トルコの分解に興味のある人が見るとおもしろいと思います。この監督というよりはアレキサンダー・ハッケさんが前面に出ている映画です。

 

『そして、私たちは愛に帰る』

親子3代の人生が予期せず混じり合う。俳優さんがみんないい。主人公のネジャット(バーキ・ダブラク)お父さんのアリ(トゥンジェル・クルティズ)・・みんな自然体の演技で素晴らしい。本屋さんでアイテン(ヌルギュル・イェシルチャイ)とスザンヌハンナ・シグラ)が出会うシーンでジーンとしてしまいます。

 

ソウル・キッチン

ビロル・ユネール、再来。このコンビがやっぱりいいですね。 ビロルさんに包丁持たせちゃだめでしょ!と言いたくなる、相変わらずの突っ張った演技です。この映画は今までのインディー映画風な作品と違ってすごくメジャー感があります。万人とまでいかなくても人も美術も洗練されていてお話しもわかりやすくなっています。普通に楽しい映画。セドリック・ クラピッシュ監督の『ロシアン・ドールズ』みたいな感覚で気楽に見ることができます。この映画の美術やアイデアがそのまんま日本のドラマで使われていて驚きました。

 

『消えた声が、その名を呼ぶ』

私は映画監督は芸術家だと思っています。そして、世の中には様々なアーティストが存在するけれどもプロパガンダを前面に押し出すというスタイルを私は軽蔑しています。なぜなら私は芸術家が作る『次元を超えたもの』を見たいから。この監督のお兄ちゃんが政府の要人であることも関係しているのかしら、とも思います。権威や体制と戦うことに芸術が一役買うことは歴史が証明しているけれども、芸術家として常に前作(前の自分)を超えたものを見せて欲しいと願っているのです。要するに、四の五の言わず、御託を並べず、ただ感動する映画を見せてくれーということです。

この映画もいろんな国に行くわりにすごく退屈で人に何を見せたいんだろう?と感じました。監督のアイデンティは"ストリート"にあると私は思ってきました。監督はドイツのクラブで12歳から遊んでいたと言います。そんな監督だからこれまで熱く、しびれるような泥臭いけど洗練された映画を撮ってきたと思います。こんないい子ちゃんな映画より、彼の人生が、血が、アイデンティティが通っている映画が私は見たいものです。

 

 

 

私が過去に見た監督の映画は以下の通りでーす。

 

  • 太陽に恋してIm Juli. (2000年)
  • 愛より強くGegen die Wand (2004年)
  • クロッシング・ザ・ブリッジ 〜サウンド・オブ・イスタンブール〜 Crossing The Bridge – The Sound of Istanbul(2005年) 
  • そして、私たちは愛に帰るAuf der anderen Seite (2007年)
  • ソウル・キッチンSoul Kitchen (2009年)
  • 消えた声が、その名を呼ぶThe Cut (2014年)